メジャーリーグで活躍する山本由伸投手の快進撃を支える専属トレーナー矢田修さんをご存知でしょうか。
矢田修さんが確立したBCトータルバランスシステムという独自のメソッドは、山本由伸選手の身体づくりに革命をもたらしました。
プロ入り当初は5回投げると10日間の休養が必要だった身体が、完投翌々日に救援準備ができるほどの強靭さを獲得したのです。
この記事では、山本由伸選手を世界最高峰の投手へと導いた矢田修さんの素顔と、その驚異的なトレーニング方法について詳しくご紹介します。
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山本由伸のトレーナー”矢田修”とは?
画像引用元:矢田接骨院
矢田修さんは、現代スポーツ界において圧倒的な存在感を放つ治療家であり、ボディワーク指導者です。
単なるトレーナーという枠を超え、「身体知の伝道師」とも呼ばれる彼の指導を受けるため、全国から多くのプロアスリートが門を叩いています。
プロフィール
矢田修さんの基本情報は以下の通りです。
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香川県で生まれ育った矢田修さんは、現在、大阪市東成区で矢田接骨院を経営しながら、教育機関キネティックフォーラムの運営も行っています。
野球選手だけでなく、さまざまな競技のアスリートに対して身体機能の改善指導を実施しているのが特徴です。
個人的なSNSアカウントは開設していませんが、YouTubeでの対談動画などで彼の考え方に触れることができます。
経歴
矢田修さんのキャリアは、1980年に20代前半という若さで「矢田接骨院」を開業したことから始まりました。
そこで身体の自然治癒力や機能性に着目し、独自の技術体系を構築していったのです。
その後、1988年には治療家やトレーナー、そしてアスリートを対象とした教育・研究機関「キネティックフォーラム」を創設します。
この施設では、矢田修さんが長年にわたって蓄積してきた知識や技術を体系的に学ぶことが可能です。
現在では全国的に支持を集め、多くの指導者が彼の理論を学んでいます。
30年以上にわたるデータの集積に基づき、矢田修さんは後述する「BCトータルバランスシステム」という独自のメソッドを確立しました。
このシステムは、アスリートのパフォーマンス向上だけでなく、怪我の予防にも大きな効果を発揮します。
矢田修さんの指導を受けた選手たちが次々と結果を出していることから、その実力は確かなものだと言えるでしょう。
BCトータルバランスシステムとは?
BCトータルバランスシステムは、矢田修さんが30年以上かけて確立した身体改善プログラムです。
このシステムの名称には深い意味が込められています。
「BC」とは「Bio(生命・生体力学)」と「Cell(細胞)」を表しており、生命活動を細胞レベルから見直すアプローチを意味します。
自然との調和を通じて自律神経の働きを高め、本来人間が持っている機能を最大限に引き出すことを目指しているのです。
システムの根幹にあるのは、人間も自然界の一部であるという考え方です。
地球の自転や月の満ち欠けといった自然のリズムと、人間の生体リズムを同期させることで、身体が本来持つ力を発揮できるようにします。
このアプローチは非常にユニークで、一般的なパワートレーニングとは一線を画しています。
具体的には、システムは三つの要素で構成されます。
まず「BCアナライズ」では、専用センサーを用いて身体の状態を多角的に解析します。
次に「BCバランス療法」で、施術を通じて身体のバランスを整えていきます。
最後に「BCエクササイズ」という実践的なトレーニングで、改善した状態を定着させるのです。
エクササイズには400種類以上のメニューが存在し、月のリズムに合わせる呼吸法「太陰鼓動」や、季節の変化に対応する「太陽鼓動」など、自然のサイクルを取り入れた独特の内容となっています。
山本由伸投手が取り組んでいることで有名になったジャベリックスロー(槍投げ)やブリッジ、倒立なども、このBCエクササイズの一部に過ぎません。
このシステムが特徴的なのは、力任せではうまくできないメニュー構成になっている点です。
正しく呼吸し、正しく立ち、正しく歩くという基礎的な動作を徹底的に重視します。
無駄な力みを排除し、効率的な身体の使い方を習得することで、怪我のリスクを減らしながらパフォーマンスを向上させることができるのです。
個人的には、自然のリズムと身体を調和させるという発想が非常に興味深いと感じました。
現代のトレーニング理論は科学的データに基づくものが主流ですが、矢田修さんのアプローチはそれとは異なる視点から人間の身体能力を引き出そうとしています。
山本由伸と矢田修の出会いと関係性
山本由伸投手と矢田修氏が出会ったのは、山本投手がオリックス・バファローズに入団した2017年のことでした。
二人を結びつけたのは、岡山県備前市でグラブショップを経営する鈴木一平さんです。
鈴木一平さんはグラブメーカー『Ip select』の販売代理店を務めており、山本由伸投手が中学時代から顧客でした。
山本由伸投手がドラフト4位でオリックスに指名されると、鈴木一平さんは彼の将来を案じ、『Ip select』のアドバイザーだった矢田修さんを紹介したのです。
初対面の印象について、矢田修さんは山本由伸投手を「漁師町のにいちゃん、という感じ。純朴さの中にやんちゃなところが顔をのぞかせる少年」と評しています。
当時の山本由伸投手は華奢な体格で、プロ野球選手として大成するとは想像しにくい存在だったそうです。
矢田修さんは山本由伸投手の身体や投球フォームを分析した上で、彼の目指す高い理想を聞きました。
そして率直にこう伝えます。
「今の投げ方の延長線ではそこには行かれない。フルモデルチェンジが必要だ」という言葉に対し、山本由伸投手は即座に「じゃあ、そうします」と応えました。
この素直な決断が、山本由伸投手のキャリアを大きく変える転機となります。
プロ入り当時、山本由伸投手は右肘の痛みに悩まされており、自分に合ったトレーニング方法を模索していた時期でした。
矢田修さんのBCエクササイズとの出会いは、まさに彼が求めていた答えだったのです。
さらに興味深いのは、筒香嘉智選手との関わりです。
筒香嘉智選手は中学時代から矢田修さんのもとに通っており、山本由伸投手は筒香嘉智選手との自主トレを通じて矢田修さんの指導をより深く理解するようになりました。
こうした縁が重なり合い、二人の強固な信頼関係が築かれていったのです。
山本由伸投手は後に「投手としての僕をつくってくれたのは、もうホントに矢田先生だと思います」と語っており、矢田修さんがいかに彼のキャリアに決定的な影響を与えたかがわかります。
この関係は山本由伸投手のドジャース移籍後も続き、矢田修さんはパーソナルトレーナーとして渡米し、チームに正式採用されました。
矢田修の指導による山本由伸への効果は?
画像引用元:デイリー
矢田修さんの指導が山本由伸投手にもたらした効果は、数字と結果が雄弁に物語っています。
プロ入り当初は5回を投げると10日間の休養が必要だった身体が、矢田修さんとの二人三脚のトレーニングによって驚異的な進化を遂げたのです。
最も劇的にその効果が示されたのが、2025年10月27日に行われたワールドシリーズ第3戦でした。
第2戦で105球を投げて完投したばかりの山本由伸投手が、わずか中1日で救援登板の準備をブルペンで始めたのです。
この驚異的な回復力について、山本由伸投手は試合後に次のように語りました。
「19歳のときは何でもない試合で投げて、そこから10日間くらい投げられなかったりしたんですけど、そこから何年も練習してこういったワールドシリーズで完投した2日後に投げられるような体になっているのはすごく成長を感じました」
さらに続けて「やっぱり矢田修という方がどれだけすごいかを証明できたんじゃないかなと思います」と述べ、矢田修さんへの最大限の賛辞を贈りました。
結局この試合では登板機会はありませんでしたが、短期間でこれほどの回復を見せたことは、世界中の野球関係者を驚かせました。
矢田修さんの指導法は、ドジャース球団からも高く評価されています。
編成部門の重役であるガレン・カー氏は「山本のやり方は、我々の理解していた野球のトレーニング方法と比べると、型にはまらないし全く違っている」と述べ、その独自性を認めています。
チーム内でも矢田修さんの影響は広がりを見せており、チームメイトのムーキー・ベッツ選手が試合前のルーティンとして山本由伸投手のBCエクササイズを取り入れるなど、そのメソッドは他の選手にも波及しています。
これは、矢田修さんの指導法がメジャーリーグという世界最高峰の舞台でも通用することを証明したと言えるでしょう。
個人的に最も印象的なのは、山本由伸投手が地道なトレーニングを黙々と継続してきた点です。
400種類以上あるBCエクササイズの多くは派手さのない基礎的なものですが、それを根気強く続けたからこそ、世界の頂点で戦える身体を手に入れることができたのだと感じます。
まとめ
矢田修さんは、独自のBCトータルバランスシステムを確立し、山本由伸投手を世界最高峰の投手へと導いた名トレーナーです。
自然との調和を重視する彼の指導法は、プロ入り当初は脆弱だった山本由伸投手の身体を、完投翌々日に救援準備できるほどの強靭さへと変貌させました。
この成功は、メジャーリーグでも注目され、矢田修さんのメソッドは新たな可能性を示しています。
山本由伸投手の快進撃の裏には、矢田修さんとの強固な信頼関係と、地道なトレーニングの積み重ねがあったのです。

