山本由伸選手の年俸推移は、まさに驚異的な成長物語です。
入団時わずか500万円だった年俸が、オリックス時代には6億5000万円にまで急上昇しました。
そして2023年オフ、ドジャースとの12年3億2500ドルという歴史的な契約を締結します。
しかし契約当初は「高すぎる」との声も多かったこの金額が、実は「安かった」と評価されるようになったのです。
本記事では、山本由伸選手のキャリアを彩る年俸推移と、その評価がなぜ変化したのかを詳しく解説します。
山本由伸の年俸推移
山本由伸選手の年俸は、彼のキャリアにおける成長曲線を如実に表しています。
NPBでの堅実なスタート期から、圧倒的な実績を築いた全盛期、そしてMLBでの歴史的契約へと続く道のりは、一人の投手がどのように市場価値を高めていったかを示す教科書のような事例です。
ここでは、NPBとMLBそれぞれの時代における年俸の変遷を見ていきましょう。
NPBでの年俸推移
山本由伸選手は2017年、契約金4000万円、年俸500万円でプロキャリアをスタートさせました。
以下の表で、NPB時代の年俸推移と主な成績を一覧にまとめています。
| 年度 | 年齢 | 年俸 | 勝利 | 敗戦 | 防御率 | 奪三振 | 主な実績 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2017 | 19歳 | 500万円 | 1 | 1 | 5.32 | 20 | – |
| 2018 | 20歳 | 800万円 | 4 | 2 | 2.89 | 46 | 32ホールド |
| 2019 | 21歳 | 4,000万円 | 8 | 6 | 1.95 | 127 | 最優秀防御率 |
| 2020 | 22歳 | 9,000万円 | 8 | 4 | 2.20 | 149 | 最多奪三振 |
| 2021 | 23歳 | 1億5,000万円 | 18 | 5 | 1.39 | 206 | 投手四冠、MVP、沢村賞 |
| 2022 | 24歳 | 3億7,000万円 | 15 | 5 | 1.68 | 205 | 投手四冠、MVP、沢村賞 |
| 2023 | 25歳 | 6億5,000万円 | 16 | 6 | 1.21 | 169 | 投手四冠、MVP、沢村賞 |
2019年の先発転向が大きな転機となりました。
最優秀防御率を獲得し、年俸は4000万円に上昇します。
2021年からは驚異的な活躍を見せ、プロ野球史上初となる3年連続投手四冠を達成しました。
それに伴い年俸も急上昇し、2023年には球団史上最高額の6億5000万円に到達します。
わずか7年で年俸が130倍に増加した計算です。NPB時代の総収入は約13億1300万円となりました。
MLBでの年俸推移
2023年12月27日、山本由伸選手はドジャースと12年総額3億2500万ドル(約463億円)の契約を締結しました。
これは投手としてMLB史上最高総額かつ最長期間の契約となります。
| 年度 | 年齢 | ベースサラリー | 契約ボーナス | 年間総額 | 累計総額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024 | 25歳 | 500万ドル | 5,000万ドル | 5,500万ドル | 5,500万ドル |
| 2025 | 26歳 | 1,000万ドル | – | 1,000万ドル | 6,500万ドル |
| 2026 | 27歳 | 1,200万ドル | – | 1,200万ドル | 7,700万ドル |
| 2027 | 28歳 | 2,600万ドル | – | 2,600万ドル | 1億300万ドル |
| 2028 | 29歳 | 2,600万ドル | – | 2,600万ドル | 1億2,900万ドル |
| 2029 | 30歳 | 2,600万ドル | – | 2,600万ドル | 1億5,500万ドル |
| 2030 | 31歳 | 2,900万ドル | – | 2,900万ドル | 1億8,400万ドル |
| 2031 | 32歳 | 2,900万ドル | – | 2,900万ドル | 2億1,300万ドル |
| 2032 | 33歳 | 2,800万ドル | – | 2,800万ドル | 2億4,100万ドル |
| 2033 | 34歳 | 2,800万ドル | – | 2,800万ドル | 2億6,900万ドル |
| 2034 | 35歳 | 2,800万ドル | – | 2,800万ドル | 2億9,700万ドル |
| 2035 | 36歳 | 2,800万ドル | – | 2,800万ドル | 3億2,500万ドル |
この契約は「後払い方式」を採用しており、初年度は契約ボーナス5000万ドルを含めて5500万ドルですが、ベースサラリーは500万ドルに抑えられています。
当初3年間は比較的低額に設定され、2027年以降は2600万ドル以上となる構造です。
年平均は約2708万ドルとなります。
この仕組みにより、ドジャースはぜいたく税への影響を抑えつつ、他選手への投資も可能にしています。
NPBでの総収入が約13億円だったことを考えると、MLB契約の規模は桁違いです。
山本由伸のドジャースとの契約内容
山本由伸選手とドジャースの契約には、単なる高額契約以上の戦略的な条項が盛り込まれています。
選手とチーム双方の利益を考慮した、極めて現代的な契約形態です。
最大の特徴は、2度のオプトアウト権(契約破棄権)でしょう。
山本由伸選手は契約期間中、自らの意思でフリーエージェントになれる権利を持ちます。
ただし、その行使タイミングは右肘の健康状態によって変動する仕組みです。
2024年から2029年の間に、トミー・ジョン手術や134日以上の連続離脱といった重大な故障がなければ、2029年と2031年のシーズン終了後にオプトアウト可能です。
肘の故障があった場合は、2031年と2033年のシーズン終了後に延期され、ドジャース側には2036年の1000万ドルの球団オプションが付与されます。
トレード拒否権は含まれていませんが、トレードされた場合は契約破棄権が発生します。
これは事実上、トレードを困難にする効果を持っています。
さらに、マイナー降格の禁止、専属通訳・トレーナー・理学療法士の提供、遠征時のスイートルーム利用など、選手のパフォーマンスをサポートする条項も含まれています。
ドジャースは契約金に加え、オリックスへのポスティング費用約5063万ドルも支払っており、総コストは3億7500万ドルを超えました。
大谷翔平選手との二枚看板で、2024年シーズンは見事にワールドシリーズ制覇を果たしています。
12年3億2500ドルでも安かった?
契約発表当初、山本由伸選手への評価は決して一様ではありませんでした。
むしろ「MLBで1球も投げていないのに、なぜそんな大金を払うのか」という懐疑的な声が少なくなかったのです。
元メジャーリーガーのジョシュ・レディック氏は、SNSで「MLBで1球すらも投げてない男に3億2500万ドルなんて大金を払うなんて」と疑問を呈し、「野球が台無しになる」という意見に同意していました。
ヤンキースも最終的に3億ドルの10年契約を提示しましたが、「誰もゲリット・コール選手より大きな契約を持つべきではない」として、追加オファーを見送った経緯があります。
年間わずか208万ドルの差で獲得を断念したのです。
しかし、この懐疑論は2024年シーズンで完全に覆されることになります。
山本由伸選手はレギュラーシーズンで30試合に登板し、12勝8敗、防御率2.49という立派な成績を残しました。
怪我人が続出した投手陣の中で、シーズンを通してローテーションを守り抜いたことも高く評価されています。
そして真価を発揮したのが、ポストシーズンでした。
プレーオフでは3先発連続で「被安打5以下、失点1以下、与四球1以下、5奪三振以上の勝利投手」という史上初の記録を達成します。
さらにワールドシリーズでは2試合連続完投勝利という偉業を成し遂げました。
2試合連続完投は、カート・シリング選手以来24年ぶりの快挙です。
現代野球では、投手の分業制が進み、完投そのものが極めて稀になっています。
そんな中での2試合連続完投は、山本由伸選手が「本物のエース」であることを証明しました。
この活躍を受けて、米国ファンからは「3億2500万ドルは超格安だった」「この投手なら破格の値段だよ」といった称賛の声が殺到したのです。
当初批判的だったレディック氏も、ポッドキャスト番組で「俺の見方は明らかに間違っていた。ヤマモトは驚異的な活躍を見せている」と認めています。
対戦相手のブルージェイズの選手も「あれだけの金額で契約した理由がよく分かります」と称賛を惜しみません。
獲得を見送ったヤンキースの判断は「3億2500万ドルの過ち」として、今も球団を苦しめ続けているのです。
個人的にも、山本由伸選手がここまで早く結果を出すとは予想していませんでした。
特にポストシーズンでの完投能力は、チームにとって計り知れない価値があります。
先発投手が試合を作れば、ブルペンは温存でき、次の試合にもフレッシュな状態で臨めるからです。
この意味で、3億2500万ドルという金額は決して高くなかったと言えるでしょう。
まとめ
山本由伸選手の年俸推移は、入団時500万円からNPB最終年6億5000万円、そしてMLBでの12年3億2500万ドルという驚異的な成長を遂げました。
契約当初は「高すぎる」との声もありましたが、圧倒的なパフォーマンス、特にワールドシリーズでの2試合連続完投という歴史的快挙により、評価は完全に反転します。
「安すぎた」とまで言われる契約となったのです。
山本由伸選手の活躍は、実力こそが最大の説得力であることを証明しました。

